「おもてなし」が育てる親日世界
山口に住む私のバイク友達は本当に人が良くて、先日もヒッチハイクをしていた若いカナダ人を拾って、食べさせたり泊めてあげたりしていました。これは極端な例ですが、日本の人たちは日本中で訪日客におもてなしの心を発揮して、結果的に日本大好き人間を大量に生み出しています。これを何年もしているものですから、世界中に日本大好き人間がじわじわ日広がっています。
先日も、洗濯機の配達がドタキャンされて文句の電話をかけたら、受付嬢が日本大好きの人で、自分が日本で素敵な思いをしたと熱心に語るものだから、怒る気力を削がれてしまいました。まあ、これが彼女のプロの手腕で私が見事にあしらわれたのかもしれませんが。
イギリスでの日本のイメージはここ数年で大きく変わりました。昔は大日本帝国の「悪行」をしっかり覚えている人たちがたくさんいました。もう30年前も前の話ですが、今でも明瞭に覚えていることがあります。ロンドンの混んだバスの中で立っていたとき、老人と目が合って、君は何人(なにじん)かと聞かれました。ウソをつく理由はなかったので、日本人だと答えました。彼は、「あのおぞましい(Horrible)国か」と比較的大きな声で言い放ちました。そばにいたインド系の人が「もうずっと昔の話だ」と言って遮ってくれなかったら、この老人はきっと大日本帝国軍がイギリス人戦争捕虜を多く死なせた「死の行進」について語り始めていたに違いありません。ドイツのようにしっかり謝ることをしなかったせいで、本当に長い間、この種の戦争の後遺症が残りました。私は、自分の祖父たちがしたことだから、その責めを受ける運命にあると思い、責めを受け止めてきました。個人的には私は何もイギリス人に悪いことをしていないのに、祖父の代がしたことの責めを負うなんて、理不尽ですね。
戦後80年経って、大日本帝国の悪行を覚えている人たちがいなくなって、やっと日本の良い面が輝く素地ができました。日本が観光立国へ舵を切って以来、日本の人たちは、訪日客を「おもてなし」の心でもてなして、日本大好き人間にして帰しています。訪日客の数は、数千万人です。それを何年も繰り返して、今では億単位の親日家が世界中にいます。そのうち、その数は数十億に及ぶでしょう。
私は川本信幹という国語の先生に教わる幸運に遭いました。川本先生が私の書いた作文で唯一感心してくれたのは、武力を行使せずに国を守る方法のひとつとして、日本を好いてくれる国をたくさん作ることだと書いたものでした。どの国も日本が大好きという状況を作り出せれば、日本をいじめる国は世界中から総スカンを食らいますね。世界が日本を守ってくれるという状況を作り出したらいい。
実は、ホスピタリティ分野で日本大好き外国人を生み出してくれている人たちは、武器とはまったく異なるかたちで、日本の国力を強めてくれているのではないでしょうか。大量の数の日本大好き外国人を毎年生み出し続けると、じわじわ広がるその力はとても大きなものになると考えます。手近な例を挙げれば、イギリスで保守党の閣僚だったジェレミー・ハントは、日本で英語を教えた経験のある親日派です。将来、この人はイギリスの総理大臣になるかもしれません。国のトップとはいかずとも、さまざまな国の主立った人たちが、みんな親日派だったらどうなるでしょう。
世界に愛される日本を作り出そうとしているホスピタリティの皆さま、お疲れさまです。皆さまの毎日のお仕事は、やがて大きく結実します。ご献身に感謝。


